2007年 04月 23日
昨晩はあまりよく眠れなかった。 原因は、WOWOWで観戦した『UFC-70』。 英国マンチェスターで行われたこの大会の目玉は、なんといってもミルコ・クロコップ選手のUFC移籍第2戦。勝てばランディ・クートゥア選手の保持するヘビー級王座への挑戦権獲得が確定するこの試合、ミルコ選手の対戦相手はガブリエル・ゴンザーガという馴染みのないブラジルの柔術系選手。私は自分の無知をいいことに、観る前から勝手にミルコ圧勝と決めつけていた。 ところが、である。 やっぱり、格闘技はやってみなければわからない。 前回、腰の引けた相手に終始プレッシャーをかけ続け、兎でも仕留めるように呆気なく勝利したミルコ選手が、試合開始直後からゴンザーガ選手のプレッシャーに圧されてじりじり後退。データでは同じ身長(188cm)のゴンザーガ選手だが、どう見てもミルコ選手より身長体重共ひとまわり大きい(以前、横浜アリーナの控え室前でミルコ選手と接近遭遇したことがある。実際、並んでみると180cmの私と身長はほとんど変わらなかった)。ゴンザーガ選手は柔術ベースだがパンチもスムースで重そう。実況解説で高阪剛氏が「私は今回、実はミルコ不利だと予想している」とコメントしているのを聞いて、え? と思い、その後アナウンサーがゴンザーガ選手の所属ジムをヴァンダレイ・シウバ選手と同じ『シュートボクセ』と説明したのを聞いて嫌な予感がした。 シウバ選手はミルコの長所も弱点も知り尽くしている。おそらく、シュートボクセはジムの総力を挙げてミルコ対策を練って来ていた。その証拠がゴンザーガ選手のプレッシャーをかけながらの時計回りの動き。それはあきらかにミルコ選手の左ストレートパンチと左ハイキック封じの計算された戦術だった。 思うように自分の間合いがつくれないミルコ選手が相手を突き放そうと右ミドルを繰り出した瞬間、待ってましたとばかりにゴンザーガ選手はそれをキャッチ! 後は柔術の技術で簡単にテイクダウン。あっさりと上に乗る形に引き込むことに成功。逆にミルコ選手は両足をクロスさせてガードするので精一杯。ここから、ミルコ選手の悪夢が始まった。 ミルコ選手はパウンド(グラウンドで上になった選手が下の選手に繰り出すパンチ)の処理が巧く、通常、下になっても顔面にダメージを受けることは少なく決して慌てない。ゴンザーガ選手のパウンドもほとんど封じて顔面を殴らさせなかった。しかし、パウンドが通じないとみたゴンザーガ選手はすかさず打撃をパンチから肘打ちにスイッチ。ミルコ選手は瞬く間に額から出血。逃げようにもじりじりと金網に頭を押し付けられ、万事休す。 グラウンドでの肘打ちと金網。 PRIDEルールでは禁じられている至近距離での顔面への肘攻撃と逃げ場のない金網。PRIDEならロープ際、たとえ相手に上に乗られようとパウンドを封じていればやがて膠着とみなされ、ブレイクによって脱出できる局面だった。 肘打ちに対して為す術ないミルコ選手。残り1分を切ってレフェリーストップがかかるかと思いきや、なぜか不可解なブレイク。ようやくピンチを脱したミルコはスタンドでの試合再開に安堵の表情。1R残り時間はあと10秒。もう少しでピンチをしのげる。と、その刹那だった。ゴンザーガ選手の右ハイキックがミルコの側頭部を刈り込むようにヒット。崩れ落ちたミルコ選手の体は奇妙な形に折れ曲がり、一瞬、死を予感するほどの危険な様相であった。 ハイキックの名手が柔術系の選手のキックに沈んだ。これほどショッキングなKOシーンを、私は見たことがない。勝負は金網に頭を押し付けられ、逃れられない状態で無数の肘打ちを顔面に浴びた時点で決していた。ミルコはUFCルールの罠に見事捕えられ、止めを刺された。格闘技はルール。わかっていたつもりだったが、それがこれほどまで勝負を左右するとは──。ミルコの敗北以上に、それが私を戦慄させたのだった。 この大会ではLYOTO(リョウト)もUFC3戦目を行い、3−0の判定勝利を収めた。 が、客席からブーイングも起った試合内容は決して誉められたものではなかった。K0を狙えばいくらでもチャンスはあったというのに、LYOTOは手堅い判定勝利を選んだ。 日本での総合デビュー戦の際、やはり、リスクのない判定勝利を選んだLYOTO選手の頬を試合後、師匠のアントニオ猪木が怒りの形相で張ったことがあった。私が猪木さんだったら、この日、同じことをしたと思う。 LYOTO選手は未だ総合格闘技負けなし。 しかし、私には未だ勝利もないように思えて仕方ない。 プロは勝っても負けても観客を沸かせてナンボ。 その意味でLYOTOは、未だにアマチュアの域を出ていない。 ■
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by leicacontax
| 2007-04-23 10:19
| プロレス/格闘技/ボクシング
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