2006年 10月 01日
クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
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昨晩、テレビで〝また〟観てしまった。
この作品、5年前に製作された『クレヨンしんちゃん』劇場映画シリーズ第9作なのだが、観る度に不覚にも落涙を余儀なくされてしまう〝上質なオトナ〟の映画だ。
劇中に登場する『20世紀博』という昭和テーマパークが昨今の〝20世紀懐古ブーム〟を見事に予見しているばかりか、なにしろ『クレヨンしんちゃん』というキャラクターおよびアニメという表現手段を用いながら、過去を懐かしんだり偏愛したりする〝子供な〟オトナを痛烈に批判するなど、とにかく気骨に溢れている。
宮崎駿作品に見られるようなアニメだからこそ可能なディティールへのこだわりも満載。たしかに、劇中の大人たちが懐かしさのあまり我を忘れて心を奪われてしまうように、昭和を知る世代にとってこの映画に描かれている世界はそれ自体が楽しくて美しい過去の宝石箱。
無味無臭のあじけない現代で夢も希望もなく生きるよりもと、すべてを捨てて(劇中の大人たちは子供も捨てて・・・子供のまま子供を産んで幼児虐待という恐ろしいパターンを彷彿させる)過去の懐かしい匂いが充満するバーチャル空間に生きようとする大人たちへ、〝懐かしいってそんなにいいの?〟と鋭い言葉を浴びせかける子供たちの反撃は、痛くて切ない。
ラスト、日本中に〝懐かしさ〟を蔓延させて大人を子供に還してしまうガスの噴霧を阻止し、未来を守るために巨大な鉄塔を駆け上がるしんちゃんファミリーの姿は文句なく観る者に勇気を与える。
この映画には〝愛だ、恋だ、病気だ、死んだ〟そんな単純化された泣きの記号の羅列だけで商売しているこの頃の日本映画とは違う、したたかな映画の力と本当の涙が詰まっている。

2001年/日本映画/監督・脚本 原恵一
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by leicacontax | 2006-10-01 09:56 | 映画/TVドラマ


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