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アントニオ猪木が語る〝異種格闘技戦史上最高の闘い〟

【闘いながら感動したモンスターマンの芸術的な蹴り】


──一連の『格闘技世界一決定戦』(異種格闘技戦)における最大の収穫はなんといってもザ・モンスターマン・エベレット・エディ選手(全米マーシャル・アーツ/スーパーヘビー級チャンピオン)だったと思われます。当時、マーシャル・アーツ(プロ空手)はまだ日本で未知の格闘技でしたが、猪木さんはいつ頃からモンスターマンに注目していたのでしょうか?


猪木 TBSで放送していたキックボクシングの番組で見たのが最初だったと記憶してる。それでビデオをもらってじっくり見て、パンチとキックが非常にタイミング良く飛び出すんで一瞬、う〜んと考え込んだ。そういうのは見たことがなかったし、アリ戦と違って今度は受ける立場でしたから。実際、公開練習であの蹴りを目の当たりにして、正直、びっくりした。チャチャーン!って手より速くて見えないんだから。


──佐山聡さんが言っていましたが、いまだにモンスターマン級の蹴りができる選手はあまりいないそうです。


猪木 パワーはそんなに感じないんだけど芸術的なんですよ。試合が始まってアイツの跳び蹴りを食ったときはホントに驚いた。ヒューンと伸びてくる。


──リングの端から端まで無重力のように跳んでいました。普通なら余裕でかわせる距離のはずが、見事に猪木さんの顔面を捕らえた瞬間は鳥肌モノでした。


猪木 これがアメリカのキックボクシングだとしたら、もうキックの世界じゃ絶対勝てないなとあのときは思ったんだけど、結局、あの蹴りはモンスターマン独特のモノだった。だいたいモンスターマンの蹴りは見えない。さらに手と足が同じくらいバリエーションがあって自由自在にどこからでも出てくるんですよ。


──モンスターマン戦の前、本格的にキックの練習を始めていた佐山さんがスパーリング・パートナーを務めていました。蹴り技に目を慣らすためだったと聞いています。しかし、仮に佐山さんの蹴りでイメージトレーニングを積んで捌けるようになったとしても、モンスターマンのそれとはかなりのギャップがあったと思うのですが。


猪木 やっぱり試合当日までわからなかった。とくにああいう跳び蹴りは練習でも見せてなかったから。さっきも言ったけど、こっちは避けたと思ってたのに食ってしまったわけで。自分の闘いの歴史を振り返っても、あれは十分防御したのに見事に投げられたルスカ戦のときと同じ。これなら食っても仕方ない、敵ながらあっぱれという気分でなにか気持ちよかったね。


【名勝負の要因となった体格差を利した極限の〝受け〟】


──猪木さんは、あえてモンスターマンの蹴りを受けていた?


猪木 ひとつ言えるのは、モンスターマンの蹴りは速いけど軽い。だからダメージはそうでもなかった。


──ボクシングでいえばジャブのような蹴りだと判断して、これならある程度は蹴られても大丈夫と判断したんですね。


猪木 そうですね。ただ接近させたくはなかった。俺の目がいいか悪いかはさておいて、どこから入ってくるかわからない。最近の空手とかキックを見てると、蹴りに入る直前の動作で来るのがわかる。でも、モンスターマンのはそこがわからなかったし、前から後ろからまったく予測できないスタンスから出て来た。こっちも組みつくにはしんどい相手でしたよ。


──軽いとはいえモンスターマンもヘビー級(身長185cm体重100kg)、あれだけの蹴りをボディに受けまくってダメージは残らなかったんでしょうか?


猪木 あまりダメージはなかったですね。ただ、あの蹴りに翻弄されて、本当はもっと早く組みついて勝負するつもりだったのが結果的に長引いてしまいました。


──この試合(1977年8月2日・日本武道館)直前、猪木さんはコンディションを崩して1週間ほど行方不明になっており、ファンをずいぶん心配させていました。それだけにモンスター戦での快勝はより感動的でした。


猪木 振り返ってみると、いいときは一度もなかったな(笑)。もうボロボロでね、いつもあっちが痛い、こっちが痛いと。アリ戦のときも肩が駄目だったし、このときは首を痛めてたのかな……。モンスターマンガあと5センチくらい身長が高かったら、あの蹴りでやられてたかもしれない。写真で見た感じよりも実際には小柄だったのが俺には救いだったね。


〈『アントニオ猪木の証明』木村光一著より抜粋〉





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by leicacontax | 2022-10-21 16:23 | プロレス/格闘技/ボクシング | Comments(0)

現実は精巧に造られた夢である。〈長谷川りん二郎の言葉〉


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