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アントニオ猪木が語る“レジェンドレスラー”   (15)ジョニー・パワーズ

【一時期、ジョニー・パワーズはアメリカのアントニオ猪木だった】


──NWFヘビー級王座というのは、結果としてアントニオ猪木のプロレス人生を彩る重要なタイトルに変貌するんですが、当初は「挑戦することすら許されないNWA王座の代替ベルト」に過ぎなかったように思います。実際のところ、猪木さんにとってNWFのベルトというのはどんな位置付けだったのでしょうか?


猪木 当時、アメリカのプロレスの中心はセントルイスのNWAで、新日本プロレス設立の直前あたりの時期がまさに全盛でした。そのNWAとパイプがあったのは日本プロレスだったんだけど、それが馬場さんの全日本プロレスに移って、そのままがっちり関係を固められてしまった。なにしろアメリカの一流レスラーはすべてNWAに牛耳られていましたから、その頃はアメリカでも日本でもNWAと敵対したらプロレス界では食っていけない時代だったわけです。

それが、俺が日本で新日本を立ち上げたのとちょうど同じくらいの時期にアメリカでもバーン・ガニアがAWAを、ジョニー・パワーズがNWFを次々に旗揚げして、NWAの絶対的価値観が揺らいできたんですね。とくにパワーズはNWAから認められないという意味では俺と似たような立場にあって対抗意識を剥き出しにしてたんです。


──なるほど。当時のジョニー・パワーズはプロレス界の価値観の変わり目に登場した、いわばアメリカ版のアントニオ猪木のような存在だったんですね。


猪木 そのときはね。


【ベルトの価値は〝誰が巻いたか〟ではなく〝どんな闘いが刻まれているか〟で決まる】


──猪木さんとパワーズの試合は独特の雰囲気があって、息が詰まるような神経戦でした。試合を見る限り、パワーズというのは〝執拗に試合の流れや間を壊す〟嫌らしい癖のあるレスラーのように感じたのですが、実際に手合わせしてみて、猪木さんはどんな印象を受けましたか?


猪木 非常にレスリングの下手な選手……。


──やっぱりそうですか。猪木さんが組み合って試合の流れを作ろうとしているのに対し、パワーズはしつこいエルボー攻撃で流れを断ち切ってしまう。あのなんともいえない噛み合わない感じは、パワーズのレスリング技術に原因があったわけですか。


猪木 なんていうか無作法で不器用というか、あんまり巧い選手じゃなかったんです。俺以外の選手とやった試合のビデオがあったら観ればわかると思うんだけど、ほとんどの場合、噛み合わなくてつまらない試合ばかりなんですよ。


──しかし、猪木さんとの試合ではそれが緊張を生んで、むしろ観る者に凄みさえ感じさせています。


猪木 大抵のレスラーは自分のパターンを作っている。それはテーズでもゴッチでもそうで「これが俺のプロレスだ!」って押しつけてくるんです。でも俺の場合、最初に影響を受けた力道山から「ケンカ殺法」、次のゴッチには「テクニックの組み立て」、そしてテーズの「王者の風格」というようなものを受け継いで、さらに「異種格闘技」という世界にまで興味を持ってしまった。ある意味、自分のスタイルを特定しなかったから、それがどんな相手にも合わせられる引き出しを作ったんだと思う。

パワーズとああいう試合ができたのも、自分で言うのも照れくさいけど、アントニオ猪木だから可能だった。パワーズから奪ったNWF王座が、日本のプロレス界でNWAに対抗できるドル箱タイトルに化けたのも、それまでの「誰が巻いていたベルトか」というような価値観とは違う闘いを積み重ねていった結果だと思いますね。


〈『アントニオ猪木の証明』木村光一著より抜粋〉





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by leicacontax | 2022-10-07 00:16 | プロレス/格闘技/ボクシング | Comments(0)

現実は精巧に造られた夢である。〈長谷川りん二郎の言葉〉


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