妖怪大戦争
2006年 05月 14日
〝天才〟三池崇史マジック!
またしてもやられたという感じだ。
SPEED主演の『アンドロメディア』もそうだったが、三池監督作品はそれがアイドル映画だろうが大作だろうがおかまいなし。自由奔放な作風は変わらない。いつだって撮りたいように撮っている。それでいて商業映画のツボはしっかり押さえており、偏狭な作品主義には決して陥っていない。時に人を食ったような斬新な演出が観客を置き去りにすることもあるが、そのケレン味は慣れるとやみつきになる。
映画全体のSFXにはしっかりお金もかかっていて、クライマックスの120万妖怪が東京へ集結するスペクタクルシーンなどは圧巻。ところが、もっとリアルな造形だって十分制作は可能だったはずなのに、主役の妖怪たちの特殊メイクはどれも脱力するくらいチープ。おまけに阿部サダヲ演じる河童の川太郎が連発するコテコテギャグなどはまるでドリフターズ。劇団☆新感線の芝居をそのまま映画にしたようなノリだ。
しかし、たぶん、おそらく、この作品はそれでいい。妖怪は人間界のすぐ隣にいて、幽霊や化け物のように人を呪うこともなければ殺すこともない。異形だが無邪気な存在。劇中、古代先住民族の怨念の化身「加藤保憲」(帝都物語のあの魔人)に向かって川姫という妖怪が言う。「わたしは人間を怨まない。怨念は人間の証。わたしはそこまで穢れたくない」と。そうなのだ。妖怪より、よっぽど人間の方がグロテスク。三池監督が妖怪に怪物的リアリティを持たせなかったのは、至極当然なのだ。
それにしても、タイトルは妖怪大戦争だが、大集結する妖怪どもは皆、野次馬の物見遊山。その辺りに妖怪気分が出ていて非常に面白い。元々怨念をもたない妖怪たちにとって、戦いは祭でしかない。それがまたいい。
幼少期に見たオリジナル「妖怪大戦争」の怖さはありませんでしたが、
新ガメラ同様、見ていて肩のこらないジュブナイルだったと思います。
三池監督の映画って、ぶっ飛んでたり、ぶっ壊れてたりするところが必ず含まれているのに、全体の印象はナイーブなんです(出版社時代にお会いしたことがありますが、本人の印象もそんな感じでした)。私はSPEEDには興味まったくありませんでしたが「アンドロメディア」には泣きました。「妖怪大戦争」もそうですが、三池作品は少年期や少女期の透明感や儚さが本当によく描けています。