2006年 04月 15日
萬斎と染五郎。ストイックとエロティック。
NHKにて、狂言師・野村萬斎と歌舞伎役者・市川染五郎の〝競演〟を観る。
しきたりの厳しい伝統芸能の世界では、通常、能狂言師と歌舞伎役者がひとつの舞台に立つことはない。萬斎と染五郎の〝共演〟だけでも異例であり、さらに、二人が〝三番叟〟(さんばそう)という同一演目を並んで〝競演〟したのはまさに画期的であった。

〝三番叟〟は元々、能を起源とし、五穀豊穣を祈願する儀式的な舞踊。特徴はダイナミックに床を踏みならす動作。大相撲の横綱の四股と同様、大地を踏みしめる農耕の神事を表し、狂言、歌舞伎双方で重要な演目になっている。今回、萬斎と染五郎によるトラディショナルな演目の踊り比べは、二つの伝統芸能の違いを見る意味でも興味深かった。

実際、観て驚いた。
萬斎の狂言スタイルの〝舞い〟はシンプルでソリッド。対する染五郎の歌舞伎スタイルの〝踊り〟はデコラティブでソフト。動作に込められた意味そのものを追求する狂言スタイルと、それプラス、役者の色気を押し出す歌舞伎スタイルの違いは一目瞭然。はなからそんな違いは承知のはずが、それにしても、並べて見ると、これがいちいちひとつひとつの動作の入り方や間の取り方などが違う。基本的な立ち姿勢からしてまったく違っていて、萬斎と染五郎、どちらの技量が上かという意地悪な興味もあったのだが、結果的に両者の芸を比較するのは不可能だった。
それでも、あえて比べるなら、萬斎のそれは〝凄み〟。染五郎は〝華〟。直線と曲線。ストイックとエロティック。その違いが、私には、まるで〝格闘技〟と〝洗練された高度なプロレス〟のように見えてとても面白かった。
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by leicacontax | 2006-04-15 21:27 | 歌舞伎/演劇


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