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決闘! 高田馬場〜染五郎・勘太郎の肉体。

PARCO歌舞伎「決闘! 高田馬場」。本日、二回目の観劇。
やっぱり舞台は生き物。前回とはまた空気が違っていて面白かった。
幕が開いて間もなかった前回は、まだ手探りの感じが残っていた。今回は楽日も近いとあって硬さは取れ、全体の流れも整理されてテンポアップ。いい感じのドタバタ感。芝居全体が「キレ気味」なのがかえって吉と感じられた(役者たちの疲れは相当なもので、ハイにならなければ乗りきれないとばかり。多少、やけくそ気味だった)。

二回目なので、今日は役者一人一人の動きがよく見えた。さらに、通常の歌舞伎の舞台よりも構図が様式的でない分、役者たちの身体そのものに目を奪われた(プロレス、格闘技観戦の癖で、物語に気を取られていない時は、どうしても演技者の肉体に目がいってしまう)。
優しい面立ちとナイーブな役のイメージもあって普段は気にしたこともなかったのだが、中村勘太郎のがっしりした肩、太い二の腕、どっしり安定した足腰にあらためて感心。勘太郎は女形もやるので、あまり筋肉をつけすぎても本来はいけないはずなのだが、舞台俳優にとって鍛え上げられた肉体の放つ説得力は大きい。
そして、勘太郎の筋肉質な身体以上の説得力をもつのが、市川染五郎の両膝、両足の甲の「こぶ」。歌舞伎界のプリンス。御曹司。染五郎は生まれつき将来を約束されているかのようにそんな呼ばれ方をしている。が、美しい容姿と華麗な演技に似合わぬその醜いこぶを見れば、彼がそんな立場に決して甘んじていない努力家であることがわかる。日本舞踊をやっていれば必ず膝や足の甲にたこのひとつやふたつはこさえるもの。それでも、染五郎の突き出たそれは遥かに限度を超し、凶器と化した空手家の拳を思わせる凄みさえ感じさせる。染五郎は、歌舞伎という芸道において、肉体が変化するほどの厳しい鍛錬を積んでいるのである。
クールな染五郎はどんな凄い演技をしても当り前にしか見えない損なタイプだ。
それでも、それが当り前でないことは、彼の肉体が物語っている。
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by leicacontax | 2006-03-24 23:46 | 歌舞伎/演劇 | Comments(0)

現実は精巧に造られた夢である。〈長谷川りん二郎の言葉〉


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