2006年 03月 02日
1999年の夏休み
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私が愛して止まない映画。
1999年はすでに過去となったが、この映画が作られたのは1988年。
1999年とは、近未来〜世紀末を表している。
ハリウッド映画や近年の比較的予算のかかっている邦画を観る感覚で鑑賞してはいけない。
この作品は一編の詩を味わうように感覚を全開にして観るのが正しい。
映画なんか好きなように観ればいいと思ったら大間違い。
全部が全部、楽にたのしめて理解できる映画ばかりではないのだ。

平成ガメラ三部作で知られる金子修介監督の若き日の佳作。
「トーマの心臓」という少女漫画の傑作を下敷きに構想したのだという。
核戦争後の世界の(あくまでもそれは暗示)、英国にあるような全寮制の男子校が舞台。
出演者は4人だけ。すべて少年なのだが、それを演じているのは全員少女。
深津絵里(当時は水原里絵)演じる則夫という少年が少年以上に初々しい。
私はこの映画を観る度に、少年時代の夏の空気を憶いだし、悲しくて仕方なくなる。
映画後半の蜩(ひぐらし)鳴く湖畔の夕焼けは、
自分がなぜ生きなければならないのかわからなくて不安で死にたくなった
早熟だった少年の頃にたしかに見たような気がしてならない。
ノスタルジーは素敵で怖くて切ない。

■1999年の夏休み
1988年/ニュー・センチュリー・プロデューサーズ/SME・ビジュアルワークス製作 
金子修介監督作品

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この映画は音楽そのものでもある。
全編通して流れる曲は「中村由利子 風の鏡」というアルバムに収録された作品。
オリジナルのサントラ盤ではないのだが、この映画の吸い込まれそうな透明度は、
彼女のピアノ曲なくしては表現できなかったと思う。
このCDが流れ出すと風景が一変する。
音楽には視覚を変容させる力がある。
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by leicacontax | 2006-03-02 04:26 | 映画/TVドラマ


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