チャーリーとチョコレート工場
2006年 10月 14日
『バットマン』や『マーズ・アタック』はコミックだし、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』は、お伽噺の絵本。それらの奥行きのなさを、物足りない、深みがないと批判する映画ファンも少なくないようだが、そんな平面的世界こそティム・バートンがティム・バートンである所以。この作品は後者のお伽噺。物語はコミックよりさらに単純で、ひねりもどんでん返しもない。
ファンタジーに理屈は不要。荒唐無稽に説明や教訓を求めるのは野暮。むしろ、映画という最先端技術の集大成である表現手段を使い、目を見張る美術、チョコレート工場従業員(小人ウンパ・ルンパ)の馬鹿馬鹿しい不思議なミュージカル・シーンなど、無意味に楽しいだけの映像世界を徹底して描き続けるバートン監督の執念めいたエネルギーには凄みさえ感じてしまう。
めでたしめでたしで気分よくお伽噺が終われば、無性にチョコが食べたくなる。それだけの映画。だが、それだけだからこそ、この映画は愛おしい。
今度観るときは、絶対チョコを食べながら観ようと思う。
カカオの香りと甘さを楽しみながら『チャーリーとチョコレート工場』を観る。
それはきっと至福の贅沢だ。
(2005年アメリカ映画/ワーナーブラザース製作/ティム・バートン監督/ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア)