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HERO’S 2006〜ミドル&ライトヘビー級世界最強王者決定トーナメント決勝戦

『HERO’S 2006〜ミドル&ライトヘビー級世界最強王者決定トーナメント決勝戦』をテレビ観戦。
前回の桜庭選手の試合のミスジャッジから始まり、今回は金子賢選手出場問題となにかと物議を醸したHERO'Sだったが、今日の大会を観る限り、結果はオーライ。素晴らしい大会だった。

今回、もっとも感心したのは宇野薫選手と秋山成勲選手の打撃への反応の鋭さ。すでに総合格闘技の世界では打撃の攻防一体化が一流の必須条件となっているが、二人の打撃に対するディフェンス能力の高さは本当に素晴らしかった。
ミドル級、ライトヘビー級共、決勝はストライカーの猛烈なプレッシャーをいかに日本選手がかいくぐって勝機を見出すかがテーマだった。K-1を見るまでもなく、打撃における外国人選手と日本人選手の差は如何ともし難い。仮にテクニックで勝ったとしてもベースである骨格と筋肉の根本的な違いばかりはどうにもならない。それが現在の格闘技の動かない定説。ところが、ミドル級では宇野選手がメンジバー選手、カルバン選手という強いストライカーを相手にスタンドで有利に試合を運んだばかりか、ライトヘビー級では秋山選手がもはや猛獣とでも形容するしかないマヌーフ選手に当たり負けすることなく、得意の寝技に持ち込んで一本をもぎ取った。宇野選手の判定負けは若干納得いかなかったが、二人の日本人ファイナリストがこの大会で見せてくれた堂々たる闘いは、日本の格闘技がこれまで越えられなかった『力(肉体)の壁』というコンプレックスを払拭してのけた価値ある結果だった。

これまで日本の格闘家は、打撃の恐怖に対して真っ向から精神力だけで対抗し、然るべき対抗技術を本気で身に付けずにここまで来てしまったのだと私は思っている。極論すれば、相手の攻撃をかわすことなく、相打ち上等、一撃で相手を倒し、最終的に自分が立っていればいいのだとの考えがどこかにあったのではないか。
ボクシングでも日本ではアウトボクサーよりも捨て身のファイターの方がつねに人気がある。「死中に活」という言葉もあるが、格闘家に限らず、日本人には武道への美しい誤解が染み付いている、そのせいだと私は思っている。
死を覚悟すれば恐怖から解放されるとはよほど高次元の宗教の修行のようなものであり、おそらくはその境地に達するまでのプロセスが武道という道なのだろうが、最終的に命のやり取りを前提にしている武道の闘いと格闘技は違う。格闘家は武道家ではなく競技者だ。そして競技者の目的は、相手のとどめをさす事ではなく、一瞬、戦闘能力を奪えばそれでいい。打撃の恐怖への対処にしても、耐えるのではなくかわして迅速に次の動作に移ることこそが重要なのだ。もちろん、日々のトレーニングは忍耐の連続。しかし、その忍耐によって身に付けた能力を発揮する場であるリングは、もはや耐える場ではない。そのスイッチの切り替えが、実は日本人のもっとも苦手にしているところで、肉体の差以上に外国人に遅れをとった原因であったように私には思えてならない。
ともかく、秋山選手の勝利と宇野選手の健闘は日本の格闘家を強く勇気づけただろう。少なくとも、心理的な気後れはこれでずいぶんと解消されたに違いない。

ただ、秋山選手のジャケット着用については、やはり、今回も疑問が残った。相手が柔道を知っているかどうかで着たり着なかったりというのは、競技として見たとき、あきらかに公平ではない。秋山選手はすでに総合格闘技の選手として一流。柔道家として果たせなかった夢を総合格闘技で実現したのである。もう、柔道時代のコンプレックスも払拭して然るべきだ。

所・金子戦はいい試合だったと思う。金子選手の成長は寝技のディフェンスにも見て取れた。しかし、やはり、一選手として見た場合、トップファイターである所選手と対峙できる立場にないことは明白だった。本気で格闘家への転向を決意しているのなら、アマチュアからとまではいわない。彼にはネームバリューというアマチュア選手にはない武器がある。プロは客を呼べてなんぼでもある。にしても、もっと下位の選手と地道に前座を務めながらステップを踏んでいくべきだろう。
Commented by Ta at 2006-10-10 01:45 x
 どうもです。

まず、金子については…試合内容についてはほぼ予想通り。結局今回桜庭もKIDもいなかったために目玉がなかった主催者側に(前田も含めて)良くも悪くも利用されてしまったという感が残りました。本人も所ではなく、もう少し楽(と言うのも失礼ですが)な相手と組まれると思っていたのではないでしょうか。真剣に取り組んでいる彼を使い捨てにはしないで欲しいところです。

さて、秋山…ルールで許されているのはわかっています。わかってはいますが、今回は汚いとしか思えませんでした。決勝で脱がなかった時点で私は試合を見る気をなくしました。マイクアピールの「柔道最高」も空虚な言葉としか聞こえませんでした。本当に柔道が最高なら柔道着を着ているときはグローブも外して柔道やってくださいと言いたくなってしまいました。それまではいい試合が多かったのに(私的には)最後でぶち壊しになってしまいました。
Commented by leicacontax at 2006-10-10 02:48
PRIDEもHERO'Sも、なぜ柔道家のジャケット着用だけを例外として認めるのか、いまもって私も納得できません。
そもそもジャケット着用はグレイシーのわがままをやむなく特例として認めたケースのはず。競技性が命の総合格闘技が、いつまでもそんな曖昧さを引きずるべきではありません。
秋山選手のファイトが素晴らしかっただけに、それだけが私も残念でなりません。
Commented by K.U. at 2006-10-10 08:38 x
木村さん、おはようございます!

昨日は、横浜アリーナまで行ってきました。試合内容については、木村さんが御指摘の通りです。素晴らしい大会でした♪

その他で『HERO’S』を観戦して改めて感心した事の一つが、看板となる「日本人選手」の多さです。

KIDが休業し、サクと須藤選手が欠場しても、秋山・宇野・所…と次から次へと『魅せられる』日本人選手が多くいる事、それに負けず劣らず「アントニオ=シウバ」「マヌーフ」等、まだまだ若い今後が楽しみな海外の選手も光っています。

会場内についても(今まで他のイベント会場で感じていた)変に重苦しく・気取った雰囲気もなく、居心地の良さは最高でした。私の場合、格闘技マニアではない友人を誘うなら、断然「HERO’S」の方だと思いました(笑)。

また、何と言っても、スーパーパイザーに前田日明さんがいらっしゃる事が、間違いなく、選手や観客の『精神的な支柱』になっていて、『HERO’S』にしかない独自の世界観が完成しつつあるな…と感心しました。

これからが本当に楽しみですし、できる限り「会場観戦組」として、応援をガンバっていきたいと思いました♪
Commented by leicacontax at 2006-10-10 10:00
K.U.さん、ようやく心おきなく観戦を楽しむことができてよかったですね(笑)。
若い有望選手の発見や観客の雰囲気など、会場観戦をして肌で感じないとわからないことは少なくありません。私も仕事を離れて観るようになって、最近、ようやく格闘技観戦を楽しめるようになってきました。一ファンとして、そろそろ楽な気分で会場で観てみたいと思っています。そのときは、ぜひ、会場でお会いしたいですね。
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by leicacontax | 2006-10-10 01:02 | プロレス/格闘技/ボクシング | Comments(4)

現実は精巧に造られた夢である。〈長谷川りん二郎の言葉〉


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