2006年 04月 14日
旅立ち。
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昨日の朝、散歩の途中、例のカモ達の様子が少しおかしいのでしばらく眺めていた。
動きがせわしなく落ち着きがない。羽づくろいをしていたかと思うと、突然、水面に立ち上がるようにしてバサバサと羽ばたく。カラスでも近くにいるのかと辺りを見たが、静まり返っていて、それらしき影も声もない。ポケットからカメラを取り出してシャッターを切り始めると、今度はまるで撮ってくれとばかりに近づいて来て、カモ達はすぐ目の前で羽を広げ、また勢いよく羽ばたいた。風が起き、池の藻の匂いが香った。

カモ達は植え込みに上がって動かなくなった。私は庭園に咲く花でも撮ろうと池を離れ、ぼんやりした乳白色の曇り空を見上げた。高い木立のてっぺん。薄い雲を透かして陽の光が差した。と、そのとき、頭上を猛スピードで何かがよぎった。さっき嗅いだ池の匂い。カモ達だった。
〈どこか他にも餌場があるのかもしれない。六本木ヒルズを住処にしておきながら、なんて贅沢なやつらだ〉
カモ達が飛び去った方角を見ながら心の中で呟き、それから数歩進み、はっとした。
ひょっとして、と思った。

今朝、池を訪ねると、カモ達の姿はどこにも見当たらなかった。
やはり、そうだった。昨日、私はどうやら偶然にも〝渡り〟の瞬間に立ち会った。
遥か海の彼方、命懸けで北へ旅立つ彼らを、私だけが見送ったのだった。
小さな光栄を噛み締め、しばし、波紋の消えた鏡の様な水面を見ながら池のほとりを歩いた。
空はいまにも泣き出しそう。
彼らの旅の無事。祈らずにはいられなかった。
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by leicacontax | 2006-04-14 12:54 | Comments(0)
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